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鍼(はり)もしくは
鍼治療(はりちりょう)とは、主に
中国医学やその影響を受けた
伝統医学(
チベット医学や
モンゴル医学)の理論に基づいて専用の鍼(針)を用いて皮膚・筋肉などを刺激することにより生理状態を変化させ、病気を治療する医術。
日本において鍼は独自の発展をしたために中国を筆頭とする世界の鍼とは異なった鍼具や手技を用いる。なお、
耳鍼(耳針)はフランスの
民間療法に由来するもので、体系がまったく異なる。
また鍼麻酔は鍼を刺すことによって
麻酔をかける方法。脳内の
エンドルフィン等の分泌を促すことによって麻酔をかける。施術中も
意識は失われず筋弛緩もないため厳密には鍼麻酔ではなく鍼鎮痛である。
医師以外の者が、鍼を業として行う場合は
はり師の免許が必要になる。
以下では主に日本の鍼を解説する。
◆鍼の歴史
鍼の元は石器時代の古代中国において発明されたといわれている。
?石(へんせき)もしくは石鍼(いしばり、石針とも書く)とよばれるこの鍼の元は主に膿などを破って出すのに使われた。これが後に動物の骨を用いて作られた骨針、竹でできた竹針(箴)、陶器の破片でできた陶針などになっていった。現在使われる金属の鍼は
戦国時代頃に作られ始めたといわれる。この鍼が
黄河文明で発展した
経絡の概念や臓腑学(ぞうふがく)、
陰陽論(いんようろん)などと結びついて鍼治療が確立していく。
黄帝内経(こうていだいけい)と呼ばれる最古の中医学理論のテキストの中に、当時使われていた鍼を特徴で9つに分類した古代
九鍼が紹介されている。
また、日本独自の鍼の発展として、
984年に
丹波康頼によって編纂された日本最古の医学書『医心方』を見ると鍼治療が当時の中医学概念より簡便化されたものになっていることがみられる。手技においても安土桃山時代に
御園意斎が金や銀の鍼を木槌で叩いて打ち込む
打鍼法や、
江戸時代に盲人の
杉山和一によって作られたなどがある。特に杉山和一の影響は大きく、管鍼法は日本の主流の技法になっており、日本の盲学校で鍼灸を教えるのは杉山和一が各所につくった鍼治学問所から発展したものである。
世界においては1950年代ごろから
フランスや東欧諸国などが中国へ鍼灸の勉強をするための留学生が訪れたりしている。
アメリカ合衆国では
1971年、
ニクソン大統領訪中の際に同行したニューヨークタイムズの記者が
虫垂炎にかかり、それを鍼麻酔で手術をおこなったことを自身の記事で報道したことから爆発的に広まったとされているが、真実は手術後における違和感や疼痛の改善であったことはあまり知られていない。
1979年に
世界保健機関(WHO)が臨床経験に基づく適応疾患43疾患を発表したり、
1997年にNIHの合意声明書において鍼治療は手術後の吐き気、妊娠時の悪阻、化学療法に伴う吐き気、抜歯後の疼痛、などに有効であることが示された
[[外部リンク] NIH 合意声明書]。また、2000年には英国医学界も鍼の有効性に関する合意声明をだしている。だが、日本の医学界においては2006年時点では、特に鍼に関する共通の声明などはなく、これら欧米の動きから徐々に鍼への注目が広がっている。
現在(2007年)、大学における鍼灸学の学部・学科は、
明治鍼灸大学、
関西医療大学、
鈴鹿医療科学大学、
帝京平成大学、
筑波技術大学があり、2007年には
森ノ宮医療大学が新設された。また、大学院は1991年に明治鍼灸大学に初めて設置され、1996年には博士号(鍼灸学)が授与された。『医心方』を編纂した
丹波康頼以来、実に1000年の時を経て、鍼灸学の博士が再度誕生したことになる。また、2007年に関西医療大学でも大学院教育がスタートした。
◆ 「鍼」と「針」
パソコンのJIS第一水準漢字にも「鍼」が含まれていることから、現在はこの難しい字が抵抗なく用いられるようになってきているが、常用漢字表には入っていないため、新聞などでは「はり治療」、「しん灸師」などの交ぜ書きが見られる。鍼と針はどう違うのだろうか。
本来「はり」を表す字は「辛」で、これは針をかたどった象形文字である。はりは治療に用いられるほか、何度も強く刺して拷問に用いたり、逃げないように入れ墨を彫ったり、目をつぶすなどの責め具にもよく用いられたため、「つらい」の意味や、はりで刺したような「からさ」を表すようになり、本来のはりは、金属でできているためにかねへんがつけられ、ついでに字体が簡略化されて「針」になった。「童」や「妾」の字の上についている「立」は、本来は辛で、逃げないように針で入れ墨をして、奴隷や弄び者にした子供や女のことである。
一方の「鍼」は、金と咸(強い刺激、衝撃を与える)の
会意文字で、こちらも責め具としてのはりの意味である。鍼と針は、もともと意味も読み方も全く同じ「異体字」である。それが次第に治療用の鍼に転用されるようになったと思われる。なお、縫い針ができるのは、それよりさらにだいぶ経ってからである。
現在、
日本鍼灸師会および
全日本鍼灸マッサージ師会は公式文書にも「鍼」を使用している。なお、中国においては、治療用の鍼も「針」に統一された。ただし、かねへんも簡略化され、「」である。
◆ 刺激量(ドーゼ)
#使用鍼:長く太い鍼は刺激が強く、短く細い鍼は刺激が弱い
#運鍼の速度:刺入、抜去の速度が急であれば刺激が強く、緩であれば刺激が弱い
#刺激時間:短時間の刺激よりも長時間の刺激のほうが強く、長時間の刺激よりも短時間の刺激のほうが弱い
#手技:鍼の動揺の小さい手技よりも動揺の大きい手技のほうが刺激量は大きく、大きい手技よりも動揺の小さい手技のほうが刺激量は小さい
◆ 個体の感受性