細胞壁に
ミコール酸と呼ばれる脂質を多量に含有し、通常の
グラム染色では染まりにくく結果が安定しないため、グラム不定と呼ばれることもある。ただし、
細胞壁の構造と加温グラム染色法からグラム陽性菌として分類するのが一般的である。一方、媒染剤を加えて加温しながら染色を行うなどの強力な方法を用いると、染色が可能になるだけでなく、一旦染まった色素液が脱色されにくいという特徴を持ち、強い脱色剤である塩酸アルコールに対しても脱色抵抗性を示す。この染色法を
抗酸性染色と呼び、本法で染色されるマイコバクテリウム属は
抗酸菌(acid-fast bacteria, この場合のfastは「退色しない」「固定された」の意)とも呼ばれている。抗酸菌は、増殖の遅い(
コロニーが肉眼で判別可能なまで増殖するのに1週間以上かかる)遅発育菌群(slow growers)と、増殖の早い迅速発育菌群(rapid growers)、培養不能菌(
らい菌のみ)の3つに大別される。結核菌はこのうち遅発育菌群に属し、分離培養には3週間以上かかることがある、
抗酸菌のうち、結核菌(
Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌(
M. bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリウム・アフリカンス(
M. africans)、ネズミ型結核菌(
M. microti)の4菌種は、(1) 37℃で増殖可能だが28℃で増殖しない、(2)耐熱性の
カタラーゼを持つ、などの点で他の抗酸菌とは鑑別される。この4種を
結核菌群(
M. tuberculosis complex)と呼び、それ以外の抗酸菌を非結核性抗酸菌あるいは非定型抗酸菌と呼んで区別する。結核菌群の4種はいずれも遅発育菌群であり、またその遺伝子も極めて類似しているため、遺伝子学上は区別できない。ただし、いくつかの生化学的性状および病原性の点では、4種それぞれに多少の相違点を持つ。このうち、結核菌(
M. tuberculosis)が
結核の原因菌としてヒトへの病原性を示すほか、
M. bovisと
M. africansがまれにヒトに感染する。
M. microtiはヒトに対する病原性を持たない。また
M. bovisを長期間継代培養して弱毒化したものが
BCGであり、結核予防のための
ワクチン(弱毒生菌ワクチン)として利用されている。